先日、急性胆嚢炎で保存加療していた高齢男性の方が、抗生剤治療のみではなかなか改善しないためPTGBDを施行しました。PTGBDという治療をご存知でしょうか。主に急性胆嚢炎の方に対して、体の外から肝臓を介して、胆管または胆嚢にチューブを入れ、胆汁を体の外に出す治療です。胆嚢の中に溜まった胆汁を体の外に出し、胆嚢炎を改善することが目的です。percutaneous transhepatic gallbladder drainageの略です。
胆汁の鬱滞が病態の根本であるため、その改善目的ですね。
しかし、血液が固まりにくくなるようなお薬を飲んでいる方は出血のリスクがあること、体の外にチューブが出ているため胆汁をためるバックを常に持たなくてはいけないことなど、デメリットもあります。
これくらいはネットで調べれば出てきますので、病院でのリアルをお話しすると、
手技自体は20-30分くらいで終わります。透視室という部屋に移動し、固いベッドに仰向けに横たわってもらいます。自分たちはせっせと必要な物品を準備します。エコー、PTCDキット7Frカテ、造影剤(ウログラフィン)直剪刀、シリンジ(造影用、生食用、局マ用、培養用)、生理食塩水、注射針(造影吸う用、局マ用)、曲ペアン、清潔ガーゼ、消毒、固定針糸(ナイロン糸)*2、IV3000、吸収パッド。ざっとこんくらい。
医師は3人で行いました。まずエコーと透視画面・操作台の場所を決めて、台の高さを合わせます。エコーで胆嚢と通す肝臓の位置を確認。肝臓の中を走る大事な血管や胆管、リンパ管は通したくありません。いわゆるグリソンを通さないように穿刺部位・穿刺角度を決めます。ちなみにうちの病院はエコーに穿刺ガイドラインが表示されるように設定して穿刺ラインを決めています。位置が決まればそこにペンなど使ってマーキングする人もいます。今回は特にマーキングせず。第10肋間の前腋窩線上やや内側くらいのイメージでした。透視で肺野の位置も確認。肺に突き刺さると気胸を起こすので。確認終われば、エコーのゼリーを拭いて穿刺予定部周囲を消毒します。
同時に色々準備します。ひとまず一人が清潔手袋を履いて、他の人が物品を出して清潔の物品を用意していきます。清潔と不潔の区別、扱いはとても大事です。穿刺するカテーテルや留置針、ダイレーターなどに生食を通しておきます。エコープローべは清潔なゴムカバーで覆っておきます。
だいたい物品の準備を終えたところで再度エコーで穿刺位置確認。今回は胆嚢と肝臓の位置から肝臓を通す角度が限られていました。だいたい3cm程度は肝臓を通して留置したいです。胆嚢からの胆汁漏出・壁からの出血などを肝臓に圧迫すること、カテーテルの固定の意味などの理由から経肝が必要です。
確認を終えたら、局所麻酔を皮下・腹膜に行い、本番の穿刺針で穿刺。肝臓を通す際は息どめしてもらいます。胆嚢内に穿刺できてことをエコーで確認出来たら、ガイドワイヤーを入れていき透視で位置をみます。胆嚢内にあるかどうかはガイドワイヤーの曲がり具合でわかります。内腔で巻いていれば大丈夫そう。穿刺針を抜いて、剪刀でワイヤーを切らないように皮膚切開。基本的に操作中はワイヤーが抜けないように透視確認しながら押し込んでおきます。ダイレーターを通して肝臓や胆嚢壁付近まで押し込んでおきます。ここで本番のピッグテールカテーテルです。コシがないものもあるため、ワイヤーを抜きながらカテーテルを入れていくのが割と良いです。ピッグテールが胆嚢内にあることを確認しワイヤー抜去。胆嚢内容物を引いていきます。今回は茶褐色透明でした。胆嚢管のは交通してなかったようです。培養分の胆汁をとっておき、内容を引けるだけ引いておきます。ここで造影剤を注入。胆嚢が造影されましたが、胆嚢管や胆管、十二指腸の造影はされませんでした。交通していなさそうです。胆石が詰まっているのでしょうか。あとは固定を。皮膚にナイロン糸を2針かけておき固定します。テープの貼り方は各施設でやりやすいようにでいいと思います。今回はIV3000を貼り付けて看護師さんに任せました。
以上です。ちょっとリアルに伝わったでしょうか。患者さんにとってはごちゃごちゃ色んなことが自分のお腹で行われていると思いますが、こんなことが行われているのです。イメージがつけば怖さも半減するでしょうか。
図があればわかりやすくなると思うので時間があれば追加します。
ちなみにこの方は6週間ほど留置継続してから、手術を行おうと思っています。
また何かあれば投稿します。では。 tino
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